【理解と暗記の両輪で合格!】5回目の挑戦で掴んだ司法試験予備試験突破法(坂野琢郎講師)

司法試験を目指したきっかけ

私が司法試験を目指した最初のきっかけは軽いものでした。大学受験がうまくいかなかったため、新しい目標を探していたときに司法試験を考え始めました。もともと、就職活動がしたくない、公務員にも会社員にもなりたくない、と考えていた私にとって、個人事業主として比較的自由に働けそうな「弁護士」という職業は(実態はまだ私もわからないのですが)、とても魅力的に思えたのです。

勉強初期の学習環境

大学1年生の初めに予備校(伊藤塾)に通い始めたものの、最初の1年は部活やサークル活動に多くの時間を割いていました。その後、周りの友人が予備試験に合格し始めるのを見て焦りを感じ、法曹になりたいという決意を改めて確認するとともに、2年生の後半頃から本格的に勉強に取り組むようになりました。

この頃は、「司法試験は暗記より理解」「たくさんのことを覚えるより現場でのあてはめ勝負が大切」といった助言を信じて、「理解」を重視した勉強を心がけていました。しかし、それは苦手な暗記から逃げ、試験会場に行けば何とかなるだろうという、甘い考えにつながっており、当時の勉強量は不安定かつ短時間なものとなっていました。

合格時のポイント

私は結局予備試験を合計5回受験し、5回目で合格することができました。受験2回目から、直前期の詰め込みで短答式には受かるようになったものの、論文式にはまったく歯が立ちませんでした。

4回目の受験で、理解だけでは合格答案を書けないことに気づき、暗記の重要性を強く認識しました。そして、現場思考という曖昧な要素を残さず安定して合格するためには、出題のベースとなる判例を確実に押さえておくことが大事であると考え、百選判例の規範を中心に徹底的に暗記していきました。このときに用いた教材は辰已法律研究所の「趣旨・規範ハンドブック」です。

これにより、当初から意識してきた「理解」と、新たに取り組んだ「記憶」がかみ合い、合格に必要なピースが揃ったのだと思います。

モチベーションの維持に関して

司法試験・予備試験を目指すうえで最も難しいのは、継続的に勉強をする環境を作ることだと思います。

私の場合、受験期間が長期に渡ったため、正直学部の最後の期間のモチベーションはそこまで高いものではありませんでした。特に予備校の講座を2年で受け終わり、優秀だった自主ゼミの友人が3年時に合格した後は、1人で勉強を続けることになり、勉強をサボってしまうことが増えました。

さらに、私は一人暮らしで、金銭的にもバイトをしなければ生活できなかったことから、試験が近づくころまではバイトでお金を貯め、短答試験が近づくころには勉強に専念し、論文試験後にまたバイトに復帰するという負のサイクルに陥っていました。その後コロナウイルスの流行もあり、より家に引きこもることになり、精神的にも非常によくない状況でした。

当然学部4年時の予備試験も不合格で、半ば仕方なくロースクールに進学することになったのですが、ローの授業に行くとことで規則的な生活ができるようになったこと、同じ目標に向かう仲間の存在に改めて出会えたこと、奨学金の充実したローを選んでアルバイトをしなくでよくなったことなどから、結果的には精神的にも物理的にも勉強に向かう環境がようやく整うことになりました。環境の変化によってモチベーションを維持することができるようになり。

受験生へのメッセージ

司法試験受験生は、勉強が進むにつれて(一部のエリートを除き)掴みどころのない将来への不安に苛まれることになります。周囲の友人が飲み会やサークルで楽しそうな日々を過ごす中、誘惑に負けず自習室に通う。早々に諦めて就職していく者もいる一方で、受かるかわからない試験に自分は時間を費やす。

私は、「司法試験を目指しているがまだ何者でもない期間」という日々を過ごすのが苦痛だった時期がありました。不安から、結局勉強が手につかず、さらに不安を増大させることもありました。

しかし、大学4年の時の予備試験に落ちた時、「もうここまで来たら私は司法試験に受かるまで受け続ける。そう決めたら、もう私は受かったようなものだ」というように考えることにしました。私が弁護士になることはもう決まっているのだから、将来への不安など考えても仕方ない、と。

この試験は、ある程度勉強が進んだころには、サンクコストが大きくなりすぎて、容易に撤退できなくなります。でも、そこまでこの道を進んでしまったのなら、もう受かるまでやるしかないと思って、不安を跳ね除け勉強を続けるしかないと思います。不安という感情をかき消してくれるのは、結局没頭している時間でしかないのですから(私も先輩面できるよう今後も頑張ります、、、)。

使用教材

以下使用した教材。

インプット教材は、基本的に伊藤塾の基礎マスター講座。ロー入学前後で追加した基本書等は下記の表に列挙。

短答は法務省のHPで過去問を印刷して年度別に問題を解き、早稲田経営出版の過去問問題集を使って答え合わせや、苦手な分野を潰したりしてました。2回目受験の前(短答初合格時)は、過去問を全部回す時間がなかったので、伊藤真の速習短答過去問シリーズという問題集を解いていました。

論証集は、当初伊藤塾の論文ナビゲートテキストを使用していたが、ロー入学前に網羅性の高さから辰巳の趣旨規範本に乗り換えています。

判例集は、基本的に伊藤塾の基礎マスターの掲載部分を参考にしていたが、学部4年時ごろより判例百選に切り替えました。行政法のみ行政法判例ノートを使用。

論文の演習は基本的に、伊藤塾の論文マスターと予備試験の過去問のほか、コンプリート答練、論文直前答練、模試の答練教材を使用。別途使用したものは下記の表に追記したが、基本的には答案構成すらせずさらっと読んだだけのものが多い。


著者|坂野琢郎

専修大学法科大学院在学中に、令和4年予備試験、令和5年司法試験に合格。条文、判例といった基礎を重視し、現場思考をなるべく減らす学習スタイルで、初学者から複数回受験生まで幅広くサポート可能です。